年末一人旅4日目・5日目 会津若松 あわまんじゅうを求めて
12/25 16時40分 会津若松駅着。
駅を出てすぐ見える、年季の入った昭和を感じるホテル。
大浴場はないが近くにある日帰り温泉施設の無料券がもらえる。
部屋に入って早々、テレビの電源が入らないというアクシデントに見舞われるも、
なんとか解決し17時半ごろお風呂に入りに外に出た。
すぐ近く(徒歩4分)だけど、雪で滑らないよう慎重に歩くと時間がかかる。
あんまりこういう入浴施設に来ないのでちょっと不安。
勝手が分からないゆえに知らぬうちに変なことしてしまって、変な顔されるんじゃないか。後ろ指さされるんじゃないか。
怪しまれない程度に周りの様子をうかがい確認しながらおそるおそる事を進めた。
お風呂は広く、薬湯・壺湯・座湯・高濃度炭酸泉・ジェットジャグジー・サウナなどバラエティに富んでいる。
露天スペースは湯気で真っ白の視界不良。これは何湯なのか?よく分からないまま入ったり。それも楽しい。
入りたかった岩盤浴は現在休止中。残念。
お風呂の後は3階にある食事処で夜ごはん食べるつもりが、勇気がなくて入れず。
せっかく受付でドリンクorソフトクリームの無料券もらったのに紙屑になっちゃった。
代わりと言っちゃなんだが、誰もいない2階のゲームコーナーでUFOキャッチャーに挑戦してみた。太平洋フェリーのリベンジ。
やっぱり全然取れずに小銭が吸い込まれていく。
もう迂闊に手を出すのはやめようと思った。
富士の湯を出るとしんしんと雪が降っていた。傘をさして隣のスーパーへ。
流れてきた蛍の光に急かされながら、地元乳業メーカーの黒ごまアイスと、なぜか売ってた青森のおいしいおつまみ「なかよし」(チータラのイカ版)を購入。
ホテルに戻って夜ごはんに郡山で買ったパンを平らげ、
自宅から約370km、会津若松の地にて、おやすみなさい。
そして12/26(月)
カーテン開ければ雪景色。
人々が次々と駅に吸い込まれ吐き出されていく様子を眺めていた。
クリスマス明けの憂鬱な月曜日。それでもみんな今日も今日とて会社に向かう。
旅先のホテルで目覚ましもかけず好きなだけ寝て起きて、曜日感覚もなくなって、
ぼさぼさ頭とよれよれ寝巻きの自分がそれを見下ろす。
まったくいいご身分だこと。
雲に覆われどんよりした空、と思えば晴れ間がのぞき、かと思えば数分後には吹雪。
情緒不安定な天気だな。
ところで、なんか遠くに白く細長い建造物が見えるんだが、もしやあれは…
これは何かのお告げ?導かれている?いやただの偶然?
行こうかどうか一瞬迷ってやめた。
そんなこんなで準備を済ませ、出かける直前にめがね破損。
レンズを水で洗おうとしたら片っぽ取れた。
フレームを留めるネジが外れてどこかに行ってしまい見当たらない。
困った。スペアめがねなんてあるかよ。
まだまだ旅は続くというのに、せっかくの旅行中に見る景色がうすらぼんやりしてるなんてそんなの嫌だ。
修理、いや新しく購入?なんにしても、めがね屋行かないと。
グーグルマップによると、運よく会津若松にもこのめがねの購入先であるJINSがある。
でも会津若松駅からは5kmほど離れたバイパス沿いにあり、
開店時間や電車・バスの時間、行く予定の観光地、次の目的地へ向け会津若松を発つ時間…
もろもろの兼ね合いによりJINS会津若松店まで行くのは無理だと判断。
とりあえず会津若松は裸眼での観光と相成った。
めがねは今日の宿泊地でどうにかしよう。
というわけで裸眼で街に繰り出した。
坂道かつ雪道を歩くこと40分近く。思ったより大変だったのでバス乗ればよかった。
飯盛山にやってきた。
白虎隊の自刃の地としてあまりにも有名。らしい。
学生時代から歴史に興味が持てない私は、白虎隊について「なんか聞いたことあんな」
くらいの認識しかない。
にもかかわらずここに来たのは、
飯盛山ふもとの参道で、ふかしたてのあわまんじゅう(会津・柳津名物のおまんじゅう)を食べるため。
私の好きな漫画家・柘植文さんのエッセイ漫画「中年女子画報」の会津若松旅行の回で知り、いつか食べに行きたいと思っていた。
ついでになにやら面白げなつくりの建造物「さざえ堂」も見たい。
そのために会津若松に来たと言っていい。
旅先の有名観光地にはとりあえず行ってみるけど、そこにある背景とか歴史とかは正直どうでもいい。
結局今そこにあるおいしいものときれいな景色にしか興味ない薄っぺら人間だったんだ。
だというのに、
どれがあわまんじゅうの店なのか?なんの店があるのか?何も分からないくらいに、
参道の店全部閉まってんじゃんよ。
そうか…まあ休み明けの平日だし、雪で観光客も少ないだろうしね。
でもグーグルマップ情報によると営業中になってたけどなー。
現在の時刻10時半。もしかして、今日はゆっくりスタートだったりして?このあと開いたりするかも?
いろいろ見て回ってまた下りてきたら開いてる可能性もなくはない。
わずかな可能性に期待して、とりあえず先に進もう。
大部分を雪に覆われた石段の横に、有料で上まで運んでくれる動く坂道があった。
朗らかな女性の声で「歩いたら本当に大変でございます、どうぞご利用くださいませ」
と利用を促すアナウンスがスピーカーから延々と流れている。
乗るかどうか迷っていると、男性が一人私を追い抜かしまっすぐチケット売り場へ向かっていった。
よし、この人に倣って乗ることにした。おもしろそうだし。
確かに動く「坂道」
傾斜がきつくてずっとアキレス腱伸ばしたまま山の上に到着。
しかし降りた先にも石段があるので、結局少しは自力で上らなきゃいけない。
で上った先にあるのが白虎隊のお墓。
順路に従ってたらたどり着いたけど、そもそも白虎隊を目当てに来たわけじゃないのよ。
一応なんとなく見て回ろうかと思ったけど、雪すごいし、通り道狭くてすれ違えないし、もういいや。
ていうかさざえ堂見に来たんだけど、さざえ堂は?
さざえ堂を求めて移動する。
雪が残って半分凍っている石段を降りるの怖すぎた。手すりがもはや命綱。
その先のゆるやかな坂道も滑りそうで怖いし、ここ冬に来るとこじゃないな。
苦労の甲斐あって無事発見した会津さざえ堂。
二重らせん構造の珍しいお堂。たしかにぐるぐると面白い形をしている。
こんな珍しいものがあるのに、このあたり他に誰もいない。
なんで誰も来ないんだ?
さっきの白虎隊のお墓にいた人たちはどうした?そのまま階段下って帰った?
それともまだ熱心にお墓を見てるんだろうか。
私があっさり切り上げすぎなんだろうか。
それはさておき、さっそく中に入ろう。
拝観料400円。昨日ホテルで貰った全国旅行支援のクーポンを使用した。
らせん状のスロープをぐるぐる上っていく。天井が低く閉塞感がある。
二重らせん構造ゆえにのぼりとくだりの通路が分かれていて一方通行になっている。
だから人とすれ違うことは絶対にない、ということだけど、
そうでなくても今お堂内にいるの自分だけ。
小さい建物なのですぐにてっぺんに着いて、天井を埋め尽くさんばかりの千社札に圧倒される。
この光景、使い方合ってんのか知らんけど、なんか「エモいな」と思った。
さざえ堂を出て、石段を下りたら神社があった。
そしてここを通っている水路が、水量がやたら多い上に流れも速い。
落ちたらどうしよう…と思って怖くなってくる。
雪に覆われて他に人もいない静かな中に響く、勢いよく流れる水の音が妙に怖い。
白虎隊が潜ったという洞穴。
こわいこわい言ってたら他の観光客の姿が見えてホッとした。
こうして飯盛山観光を終え、あわまんじゅうへのわずかな期待を込めてふたたび参道へ向かうも、やはり行きと変わらぬシャッター街状態。
今日はもう完全に休みのようだ。
しかしがらんとした参道の中で一軒だけ開いている店があり、「もしかしてここにもあったりしないだろうか」と、ないとはわかりつつ未練がましく外から覗いてみた。
売っていたのは土産物や甘酒など、今はいらないものしかない。そりゃそうか。
完全に望みを絶たれ失意のうちに立ち去ると、背後から「いらっしゃいませどうぞー」と声が聞こえた。
私が店の前にいたことに遅れて気づき、客を逃すまいと店先に出てきたんだろう。
申し訳ないけど今日はそちらのお店に用がないのです――。
もうけっこう店から離れてるのをいいことに、その呼びかけが自分に向けられてるとは思ってないふりしてそのまま振り向きもせず歩いた。
もうけっこう離れてるというのにしばらくの間どうぞどうぞと呼びかけられていた。ごめんなさい。
「中年女子画報」に出てきた、あわまんじゅう店の向かいの「グイグイくるプロモーション」の土産店ってあそこのことだろうか。
私には一人でそのプロモーションを受け止める自信はない…
さてやっぱりあわまんじゅうへの未練が断ち切れない。
グーグルマップで探したところ、会津若松であわまんじゅうが買える店は飯盛山の他に二軒。
そのうちふかしたてが食べられるのは鶴ヶ城近くにあるお店。
鶴ヶ城までのちょうどいいバスがないが、それなら歩いたろうやないか、40分。
グーグルマップ先生の教えを時々無視しつつ、40分以上かかって鶴ヶ城付近にたどり着き、しかし詳しい場所が分からず。
周辺をさまよいながらググったところ、独立した店舗でなく、土産物屋や飲食店の集まった施設の中に入っているということが判明。
そしてその施設もようやく見つけ、やっとあわまんじゅうにありつけると思いきや、
まさかの施設ごと休館日。
なんでよ!
またかよ!
グーグルの嘘つき!
もうグーグルの言う「営業中」を信じるのはやめようと心に誓った。
こうなったら残りの一店舗にも行ってやる。そこも休みだったらすべてをグーグルのせいにして諦める。
次の店まではここから徒歩約11分と大した距離ではないんだが、
- 二度もふられた悲しみと思い通りにいかない苛立ち
- 歩きにくい雪道を1時間以上歩き続けている疲れ
- 当初の予定が崩れて残り時間がなくなっていく焦り
- 裸眼のせいでよく見えない視界によるストレス
- 雪まで降ってきて泣きっ面に蜂状態
- ていうか何やってんだろうわたし…
これらが一気に押し寄せてきて、なんだかもうぜんぶ嫌になった。
精魂尽き果て、もうすべてが恨めしい。
それでも半ばヤケになってイライラと恨めしさを原動力に歩き続け、なんとか三軒目にたどり着いた。
よかった、開いている。今度はグーグル裏切らなかった。
気づかず通り過ぎてしまいそうになったほど街に溶け込んで、
「まちの小さな和菓子屋さん」然としている、個人的にかなり入りにくいタイプのお店。
ふだんならまずこういうお店に入ることはないんだが、さすがに今日は素直に入るよ。
ガラスの引き戸をカラカラと開けて入ると、すぐ目の前がショーケースの小さなお店。
よかった、あった、あわまんじゅう。作り置きで温かくはないけれど、もう贅沢は言ってられない。
まさしく三度目の正直でやっとあわまんじゅうをゲットして肩の荷が下りた。
その夜ホテルでいただいた。
粟ともち米の生地でこしあんを包んだ、ふつうにおいしいおまんじゅう。
よくある餅菓子とも違うもちもちした食感が楽しい。
これを求め奔走し苦労したのも報われるほどの味か、といえばそこまででもないかも。というのが正直な感想。
でも無駄に歩き回ったのも終わってみれば良い旅の思い出。
次はぜひ、あわまんじゅうの本場・柳津で、ふかしたてを食べたい。