人と関わりたくない人

誰も知らない誰かです

年末一人旅5日目 会津若松の教え

あわまんじゅうを探して歩きまわった後は予定通りの会津若松観光に戻って、

レトロな町並みの観光スポット・七日町通りに向かった。

歴史ある建物が立ち並ぶ大正ロマンの雰囲気漂う通りらしい。

 

平日だからか観光客の姿も少なく静かだし、言うほど大正ロマン感も感じられないように思ったが、飲食店や伝統工芸品などのお店も多いので町歩きするのは楽しそう。

気になるお店に寄りつつ端から端までゆっくり歩いて楽しみたいところなんだが、

あわまんじゅう探しに必死になりすぎたせいで残り時間が少ない。

このあとの予定や電車の時間を踏まえると、七日町通りにはせいぜい10分ほどしかいられない。

せっかくの素敵ストリートをただ急いで歩くだけという、なんとももったいない観光となってしまった。

 

でもやっぱりそれだけじゃ悲しいので、

かろうじて一軒だけ、和菓子屋さんに入っておやつに生クリームどら焼きとくるみだんごを購入。

「アスパラどら焼き」というめちゃくちゃ気になった一品は売り切れで買えなかった。

 

いろいろ悔いが残るのでまた来たい。

 


さて短い時間だったが七日町通り観光も済み、これで会津若松観光すべて終了。駅に急ぐ。

次は駅構内にあるお店でラーメン食べる予定だ。

電車の時間まであと40分しかないのに駅まで徒歩20分近くかかる。

できるだけ早く駅に着かないとラーメンの時間がなくなってしまう。

 

走るの嫌いな自分でもこの時ばかりは走った。

親譲りの運動音痴、体育の授業のトラウマによる運動嫌い、

スポーツテストの50m走で「おっそ!」と笑われた忌々しい記憶…

走るの嫌い。ついでに急かされるのも嫌い。できるだけ走りたくない。

 

でも今はラーメンのために一分一秒でも早く駅に着きたい。

会津若松に来てまだご当地グルメどころかまともな食事を摂っていない。

ていうかお菓子しか買ってないのに、このまま去るのは避けたい。

だから自分には珍しく、走った。

 

しかし運動音痴にプラスして老化による体力の衰えのせいで、のろのろと休み休みでしか走れないので大して時間短縮になってない気がする。

加えていつのまにか駅までの最短ルートから外れてるし、無駄に遠回りしているような。

 

なんかもうこれ無理な気がしてきた。

「ラーメン食べる」か「予定通りの電車に乗る」のどちらかを諦めるしかない。

どちらも諦めたくはないが、両方ともやれる時間はない。

どちらを取るか。どちらにせよ、もう急いでも無駄なので走るのやめるか。

 

そのとき、突如頭の中にあのセリフが湧いて出てきた。

 

「あきらめたらそこで試合終了ですよ?」

 

安西先生である。

 

かの有名なこの言葉が自分の胸に響いたことは今まで一度としてなかった。

ただの「名言」のひとつとして形骸化していた。

あー、スラムダンクの、安西先生のアレね、ってなもんである。

 

しかしなぜか今はこの言葉を妙に素直にすんなりと受け入れられた。

確かにまだ諦めるには早いような気がしてきた。

たまには「最後まで諦めずに頑張る」をやってみようか。

もしかしたら本当に「諦めなければ夢は叶う」的な未来があるかもしれない。

ラーメン食べて、ついでにお土産も買って、予定の電車に乗れる望み通りの未来が。

 

試しに信じてみることにした。

 

そうして走り続け予定通り20分で駅に到着。

残りは20分、なんとかいけそうだ。

駅構内にある目当ての「会津山塩食堂」に一直線、

外食苦手人間なのでいつものように店の前で一瞬ためらったものの、勢いで入店。

事前に食べるものは決めていたので着席とほぼ同時に注文完了。

あとは待つだけ。

 

・・・

 

まだかな。

いや決して「遅い」というわけではない。しかし今はとにかく早く来てほしかった。

着々と残り時間は減っていくのにただ待つしかできないこの状況がどうにももどかしい。

爆速で料理が運ばれてきてほしかったが、そう都合よく事は運ばない。

そもそも頼んだのがラーメン単品じゃなくミニソースカツ丼とのセットだから尚更だ。

さすがにここは単品にしておくべきか一瞬迷うも、

「いや、諦めない!食べたいものを食べる!」という強い意志による、あえてのセット。

 

でもやっぱ間違えたかな、選択。バカだったかな。

それでもチャーシュー麺をやめてノーマルラーメンにするという妥協はしたんだけど…

大して変わらないか…

 

若干後悔し始めていたところで、来た!

早く食べないと!(でも写真は撮る)

会津山塩ラーメンとミニソースカツ丼セット

 

会津山塩ラーメン」とは、

磐梯山のふもとにある大塩裏磐梯温泉の温泉水を煮詰めて作られた『会津山塩』という

希少な塩を使ったラーメンだそうだ。

 

今日ここで初めてその存在を知った会津山塩ラーメンとの邂逅、じっくりと堪能したい。

その気持ちは山々なんだが、いかんせん今の私には時間がない。

電車乗るまであと12分しかないんだもの。

いや会計とか改札入ってホームまで行くとかもろもろ考えると残り10分もないか。

とにかく一刻も早く食べ終わらねばならない。

 

精魂込めて会津山塩を作った方々、そしてこのお店の方々。

関係者各位への若干の後ろめたさを感じつつ、味よりなによりとにかく早く食べきることだけを考えて麺をすすり続けた。

 

きれいに透き通ったスープの見た目そのままにあっさりとおいしい塩ラーメンを平らげ、

お次はソースカツ丼

どっぷりとソースに浸かりながらもサクッとしたカツが嬉しい。このソースの味も好きだ。

こういう味濃い目のガッツリ感を口が求めていたからか、どちらかというとラーメンよりソースカツ丼の方が好み。

いや、あっさり塩ラーメンとがっつりソースカツ丼の組み合わせがよいのだ。

セットにしたのは間違いじゃなかったのだ。

 

おいしい。旅先でおいしいものに出会えて嬉しい。

だけど時間が!ない!!

わー早く食べなきゃ―!と未だかつてないくらい急いで食べてるつもりなんだけど、

気持ちだけ急いて実際にはそんなに早くは食べられないもんだな。

 

思うようなスピードで減っていかないどんぶりの中身。

刻一刻と迫る電車の時間。

さすがにもう諦めムードが漂ってきた。

急いでるからって食べ残して帰るのは絶対嫌だから、やはり電車の時間遅らすしか。

 

いや、まてよ、ワープという手もあるな。

安さと引き換えに長時間移動の辛さに耐える青春18きっぷの裏技、新幹線ワープ

一部区間で新幹線を利用することで時間短縮しラクをするという手。

新幹線代は痛い、けど到着時間遅らせたくない、いやしかし。

 

どうにかうまく収まる方法はないものかと頭の中であれこれ考えつつ、ひたすら手と口を動かし必死に食べすすめていると、

どんぶりに残る米の量、現在時刻を照らし合わせるに、もしかして間に合うかも?

諦めかけてたところに一筋の光が差し込んできた。

 

ラストスパート、がんばって飯をかっこむ。

最後の一口飲みこんで、水を一口、残るは会計のみ。伝票掴んで、急げレジへ!

 

とそこで、ひと足早く食べ終わった隣の男性客に先を越されてしまう。

いやいや一人くらいなら大丈夫!

気を取り直して背後に位置していたレジを振り返ると、まさかの会計三人待ち。

残り時間は5分切っている。

 

あ、終わった。

さすがにもう無理だこれ。ここまでだ。試合終了。万事休す。

 

完全に諦めて大人しく並んでいると、列は意外とスムーズに進んでいき、思っていたより早く自分の番が来た。

あれ、あれあれ、これもしかして間に合いそう?

いける気がしてきた。

どうやらまだ終わりじゃなく、諦めるにはまだ早いようだ。

あとは電車に乗るだけだ。急げ。

 

残り時間は2分ほどしかないが、店を出れば改札は目と鼻の先。

楽勝だと思ったが、そういえばまず青春18きっぷにスタンプ押してもらわないといけないのだった。

たとえばそこで窓口に先客がいたとしたら。

それにこれから乗る郡山行きの電車が何番線から発車するのかも知らない。

改札を抜けそこにたどり着くまでに距離があったら。

途中でちょっと引っかかったらもう無理だ。すべてがスムーズにいかないといけなかった。

 

寄るつもりだったお土産屋もスルーしてまっすぐ改札に来た。

人目を気にする性格ゆえに、焦りで軽くテンパっている内心とは裏腹に努めて冷静に、余裕なふりをして駅員に青春18きっぷを差し出す。

ここまでは運よくスムーズに来ている。

あとは電車だ。どこだ!何番だ!階段ダッシュか!

 

と思ったら改札入ってすぐのホームに郡山行きが停まっていて拍子抜けした。

ついさっきまで焦っていたのがウソみたいに、余裕綽綽で電車に乗り込むことができた。

 

 

諦めないでやってみるもんだなあ。

会津若松でやりたかったこと、ほぼ全部やることができた。

最後にお土産買うのは叶わなかったけど、電車乗ってから発車するまで案外時間あったから、これも急げば買えたのかもしれない。

 

会津若松で思いがけず「簡単に諦めないことの大切さ」を学んだ気がする。

というか、自分は何事も早々に見切りをつけがちだったのかもしれないと気づいた。

もうちょっと頑張ってみてもいいのかもしれない。

今後、折に触れて今日の会津若松での出来事を思い出そう。

 

 

さようなら会津若松。また来よう。