年末一人旅4日目 猪苗代湖鳥まみれ
12/25(日)
ぐっすり寝て起きた。メリークリスマス。
焼きたてパンの無料朝食のついたホテルだったけど食べずにチェックアウト。
これからパン屋に行く予定なのでさすがにパンの食いすぎになってしまう。
でも無料なのにもったいなかったかな、食べときゃよかったかな…
ホテルを出てもしばらくの間後悔を引きずっていた。
ところで朝からなんだか虚しい気分でいる。
なんなんだろう自分って…なんなんだろうこの人生…
もやもやしながらパン屋の方角に向かってテキトーに歩いてたら、大きな公園にぶち当たったので突っ切っていくことにする。
広い公園には誰もいなかった。
いたって平和で穏やかな空間でぼんやり佇んでいたら、頭の中が少し落ち着いてきた。
先に進むと立派な日本庭園があってテンションが上がる。
池で泳ぐカモを眺め立ち並ぶ松の間を散策しているうちに、次第に元気になってきた。
偶然この公園に行き着いて良かった。
「旅先での出会い」ってよくいうけど、そんなん本当にあんのか?と疑うくらい、
今まで旅先で誰かとちゃんと交流した経験がない。
でも美しい風景やおいしい食べ物との偶然の出会いならたくさんあった。
それだって十分楽しい。
気分を持ち直し、目当てのパン屋でパンを購入。
ここも去年の旅行でたまたま来た店。
この店が近所にあってほしいと思うくらい気に入った。
楽しかったとか美味しかったとかいい思い出をもう一度味わいたくて、同じところに行きがち。
でも思い出はいつのまにか美化されている。一番最初の感動はなかなか超えられない。
パン屋の後、駅に向かう途中で地元の百貨店に寄った。
なにか歌声が聞こえる。化粧品売り場のお姉さんが手拍子をしている。
クリスマスコンサートが開かれていた。
通り過ぎながら耳に入ってきた歌は、おおざっぱに言うと
「人それぞれ意見は違うけど、認め合おうぜ、みんな違ってみんないい」
そんな感じの内容。
よくあるやつーよくありすぎて良いこと言ってても響かないやつー
なんてひねくれたこと思ったけど、
よくある内容を歌詞にして音にして曲にして、そしてそれを人前で歌う
それがもうすごいことだよな。
自分にはできないくせに簡単に馬鹿にするもんじゃないよな…と反省した。
さて、これから電車で猪苗代駅まで行き、猪苗代湖の遊覧船に乗るはずだったんだが、
ここ数日の最強寒波の影響で悪天候が予想されるために、
残念ながらクリスマスの昨日今日と終日運休だという。
寒波の野郎が恨めしい。なんで今だよ。和らげよ。
遊覧船は仕方ないので諦めるとしても、猪苗代湖は見ておきたい。
遊覧船乗り場のある「長浜」では冬の間は白鳥が見られるという。カモもたくさんいるという。しかもエサやりもできるという。
それは絶対行かないと。
遊覧船の代わりにそれを楽しみにして行こう。
しかし調べているうちに、
湖挟んで長浜と反対側にある、同じく白鳥の飛来地として有名な「志田浜」も気になってきた。
駅から徒歩20分で行けるらしいし、電車とバス(本数が少ない)を乗り継いでいく長浜よりも都合がいいのではないか?
お土産屋や食事処もあるしこちらも白鳥のエサを売ってるそうだ。
志田浜に行くか。
早めに駅に来たので無事座れた。
今日は移動距離が比較的短いので青春18きっぷでなく、ICカードを使用。
発車を待ちながら、ふと思いつく。
そういえば、この路線ってICカード使えるのか?
心配になって調べてみたら、磐越西線では一部の駅しか対応していない。
きっとその旨どこかに掲示されてたんだろうが全く気が付かなかった。
この場合、降りるときどうしたらいいんだ?
再度調べてみたら、
「降車駅でICカードで乗ったことを告げて現金で清算→証明書を受け取る→
後でICカード対応駅の窓口で入場記録を消してもらう」
という手順らしい。
でもこれワンマン列車なんだよな。
降りるときに運転士にそんなめんどくさいこと申告するの、気が引けるな。
運転士からしたら多少なりとも迷惑なのでは?
「チッめんどくせえな乗る前に調べとけや」と思われるんじゃないか…。
できるかぎりそのような事態は避けたいところ。
となると、今すぐ改札に戻って窓口で入場記録を消してもらい、改めてきっぷを買いなおして入場するか。
でもそうやって戻ってくる頃には、きっともう座席は埋まってて座れないだろう。
せっかく座れたんだからこのままのんびり座っていたい。降りたくない。
よし、やっぱり関都駅通過してICカードが使える猪苗代駅で降りよう。
当初の予定通り長浜に行こう。
そういうわけで猪苗代駅下車。
ICカードでスマートに出場。
野口英世の出身地、猪苗代の駅前は正直言って寂れていた。
駅舎を出てまず目に入る店は、たまたまなのか潰れているのか軒並みシャッター閉まっているし、そこらを歩く人もいない。
駅前ロータリーに停まっているタクシーは暇そうだ。
しかしバックに構える雪に覆われた磐梯山と青い空のコンビネーションが美しい。
とてもすがすがしい気分。たのしいな!
でかい山っていいよなあ。
いつでもドーンとそこにある、その地のシンボルのような存在。
なんかグッとくる。「心のふるさと」って感じ。
バスの時間まで30分、暇だ。
駅舎を出たり入ったり駅前をうろついたり、待合室でパン食べたりして時間を潰す。
ようやく来たバスに乗り込んだのは、私と待合室でずっと座っていた女性の二人だけだった。
存続が危ぶまれていそうなガラガラのバスに揺られ長浜を目指す。
道路を見るに除雪されているのは車道のみで、歩道は完全に雪に埋もれて歩けそうにない。
やはり雪国そして車社会の田舎、こんな時季に歩いて出かける人なんてそんなにいないのだろうな。
予定通り関都駅で降りて志田浜に向かっていたら20分歩くのだって大変だったかも。
猪苗代駅から約15分ほどで長浜に到着。
同乗の女性も一緒に降りた。自分と同じ目的の、同じ女一人の観光客だったようで、親近感が湧いた。
雪に覆われた湖畔は一部除雪されて通り道が作られている。
すぐそばに、やきいもののぼりが立っている小さな売店があった。
どうもそこで鳥のエサを売っているっぽい。
しかし残念ながら店は閉まっている。遊覧船が運休だからそれに伴って?
エサやり、できないのか…
湖には白鳥もいるけどそれ以上の大量のカモ!
来ている人たちはみんな楽しそうにエサを与えている。
いいな、私もエサやりしたい。したいけどエサがない。
皆さん自分で持ってきたんだろうか。
うらやましい…私はただ見るだけ…
こうなったらもったいないけど郡山で買ってきたパンちぎってあげようかな
具の入ってない端っこの部分だったら大丈夫じゃないか?
リュックからパンの袋を出そうとしたところで、
あれ、よく見たらさっきのお店、営業してるっぽい?
寒いから客が来た時だけ小窓を開けて対応しているようで、そのせいでやってないのだと勘違いしていた。
よかった、エサが手に入る!エサやりできる!
食パンの耳やきれはしが袋に入って100円から。お得な大容量袋もあり。
エサあげまくりたかったのでちょっと多めの200円の袋を購入。
さあ、あげまくろう!
かわいいーカモかわいいー。つぶらな瞳とまるいお腹、いや胸?かわいいよー
向こうからグイグイ来るからエサのやり甲斐がある。めっちゃ楽しい。
湖の向こうに連なる雪化粧した山々の景色も素晴らしく、心から来てよかったと思った。
現地にいるのにすでにまた来たくなっている。
白鳥は人慣れしておらず、カモのように向こうから寄ってくることも、陸地に上がってくることもない。波打ち際にいる白鳥に近づくと逃げる。
白鳥にエサをあげようと狙いを定めて投げても、水面に落ちるやいなや周囲のカモが一斉に群がって即座に食べてしまう。白鳥はカモに比べ動きが鈍い。
白鳥が空中でキャッチできるようにうまいこと投げるのはなかなか難しい。
エサやりを楽しむ人々の中には、市販の食パンを一袋そのまま持ってきている人もいた。
更にはスーパーのかごいっぱいに食パンを持参してきたつわもの一家まで現れ、豪快にパンをばらまいていた。
エサやりも一段落したところで、乗るつもりだった遊覧船の近くまで行ってみた。
遊覧船として乗れるのははくちょう丸の方で、かめ丸は現在予約制の船上レストランとして使われているそう。
ちなみに今日は「クリスマスクルーズinかめ丸」というイベントが行われる予定だった。残念。
さて、パンの耳もなくなったけどバスの時間まではまだある。あとはテキトーにぶらつくか。
すると同じバスに乗ってきたあの女性を見かけた。
あ、あの人だ、とついつい目で追ってしまう。
駅からずっと同じルートの同じく女一人旅の彼女に、勝手に仲間意識を抱いていた。
バスの本数が少ないので、きっと帰りも一緒になる。
同じく時間をもてあましたのであろう彼女は、再び売店でエサを買い、エサやりを楽しんでいた。
いいな、私ももう一回やろっと。
今度はさっきより少ない100円の袋を購入。それでも十分すぎるほどの量が入っていて、
残りの時間で心ゆくまでエサやりを堪能した。
時間になりやって来たバスに彼女に続いて乗り込んだ。
しかし私は駅まで行かずに途中下車するのだ。
さようなら。どこかの誰かさん。
バスを降りたら人っ子一人いない雪道を目的地まで歩く。
歩道が埋まっているので車道を歩かざるをえない。
車にしてみたら邪魔かもしれないが仕方ないんだ勘弁してください。
道の駅向かいのビニールハウスには「いちご狩り」の文字。
ちょっとやってみてもいいかしら、なんて興味を持ったら料金なんと2,800円。たけーよ!
時刻は15時近く。お腹空いてなくもないので何か食べたい。
レストランには食べたいものがなかったので、フードコートでラーメンを。
おーいしーい。
喜多方ラーメンの人気店店主が指導した店らしいので、これも喜多方ラーメンでいいかと思われる。
お腹も満たされたので広い売店でお買い物。
工芸品や野菜、弁当、お土産、いろいろ売ってて楽しい。物欲爆発しそう。
道の駅では地場野菜や果物が安くておいしそうでいつも買いたくなる。
地元の特産品も好きなだけ買い漁りたい。
さっきのフードコートにある食べ物も全部食べたい。
でも胃の容量は限られているし、旅の途中でそんなに買い込んだら邪魔なので泣く泣く諦める。
地元のもの、かつすぐ食べきれて荷物にならなそうなものを厳選していくつか買って、郡山のホテルでもらった地域クーポンを使い切った。
さあ駅に向かおう。電車の時間が迫っている。
空は雲に覆われ真っ白であたりは薄暗くなってきた。
電車間に合うかな。乗り損ねたらこの寒空の下でどうやって時間潰そうか。
無事間に合った。
次来るときこそ遊覧船に乗りたい。さようなら猪苗代。
猪苗代に別れを告げ、今日の最終目的地の会津若松へ向かう。