あえて抵抗しない
ショッピングモールにて、あまりに腹が減っていた。
フードコートにある中華の店で、目についたチャーハンと餃子を注文した。
しばらく待ったのちベルで呼び出され取りに行く。
コップに水を汲んで席に戻り、テーブルにトレーを置こうとして気付く。
水に油浮いてる。
ていうかコップきったねえな!
汚れたコップに入った油の浮いた水を見たら普通飲む気にはならないだろう。
食事時ならなおさら、そうでなくてもきれいな水にありつくことに何の苦労もない日本で、わざわざそんな水を飲む必要はない。
でも飲んだ。
まあいいか、と飲んでみた。
ぬるい。
ぬるさで気持ち悪さが加速する。
ふと見たチャーハンの皿も淵の方までぬめぬめしている。
なんでこんなにどれもこれも油にまみれているのか?
年季の入ったちょっと汚い街中華かなんかのつもりか?フードコートなのに。チェーン店なのに。
いや単に衛生管理がずさんなだけか。
それはともかく、なぜ私はこの水を飲み続けたんだろう。
その上なんで全部飲み干したんだろう。
油浮いてるのに気づいてすぐに、「うげっ」て思ったのに。
数時間経った今になっても思い返して気持ち悪くなってるのに。
飲むのやめればいいのに。
新しい水を汲んでくればいいのに。あの店のコップはどれも怪しいので、フードコートの紙コップ水汲んでくればいいのに。
なんでする必要のない我慢をしているのだろう。
細かいことは気にしない、寛大な人間でいたかったから?
見栄?虚勢?
誰に対しての?
誰も見ていないのに。
生来のめんどくさがりだから、不快なことに抗うのさえめんどくさいのかもしれない。
流されるままにそれを受け入れて、後になって「よく考えたらこれ不快だ!」と理解している気がする。
なんなんだ、わたしは。
チャーハンと餃子は美味しかった。