人と関わりたくない人

誰も知らない誰かです

一人飯

いつかのある日、初めて一蘭に行ってみた。

一席ずつ仕切られたカウンターとか、店員と顔を合わせない造りとか、人目をそこまで気にしなくて済むのはいい。
まあ思ってたより横の人の気配は普通に感じるけど。


もう長いこと一人飯しか選択肢がないのだけれど、未だに苦手意識があってすんなり店に入れない。
よく言われるような、「一人で外食してると友達のいない寂しい人だと思われるんでは?」とかそんなのは気にしたことがない。
じゃあ何を気にしているのか?


一番の難関は最初の入店時。
私は人とかかわることに対する恐怖心をずっと抱いて生きている。
だから今からこの扉を開けて人とかかわりに行く、となれば、そりゃあものすごい抵抗感が押し寄せるわけで。


仮に、心を強く持って何食わぬ顔して普通の大人のふりをして思い切って入店したとして、
そこでもし店員に気づいてもらえなかったらどうしよう?と考えてしまう。
店内がどういう造りになっているかわからないし、店員が奥に引っ込んでいて誰もいないかもしれない。


「すいませーんひとりでーす」とか軽い感じで言ったらいいんだろうか。言えるだろうか自分に。
思いきって言ったところで声が小さくて気づかれなくて、一人で「あー‥」ってなって、入口でただ立ち尽くす変な奴と化してしまうのではないか。
そしてそんな姿を近くにいた他の客に変な目で見られ哀れまれるのではないか。
そうこうしているうちに店員に気づいてもらえたとして、内心、「いやいい大人が黙って突っ立ってないで声かけろや」とか思われるんじゃないだろうか。


とかなんとか勝手に心配になり、そうやってぐるぐる考えてるうちに、なんかもうめんどくさくなって帰るよくあるパターン。


とはいえ一応35年も生きてきて、自分が予想する最悪の事態は案外起こらないこともわかってるし、
自分はもうあの頃のような、何も言えずに立ち尽くして下を向いて涙を流す子供ではないんだと、それも気づいている。
思いきって行ってみれば拍子抜けするくらい普通にスムーズに事が運び、結局のところ単に考えすぎなのだということも知っている。

でも考えてしまう。


一人飯しか選択肢がないんだから、なんにも考えないでフラーっと入れるようになりたい。
井之頭五郎にあこがれている。



意地でもトイレットペーパーを切らさないという執念を見せつけてくる一蘭のトイレ。